今回はMk.11のトリガー部分に当たるバランスバルブの制作を行いました。
キャノンに用いるバルブの要件
Mk.11の動作機構は、従来のそれがエアカプラのリリースで行なっていたのに対し、別途バルブが必要になります。そのバルブに求められる要件は、
流量が大きい
バルブ開放までに要する時間が短い(dv/dtとはまた違う)
この2つです。
この流量に関しては、例えばボールバルブやバタフライバルブなどが有利です。
例としてボールバルブ
しかし一方でこれらの開放までに要する時間は長く、かつ抵抗が大きいです。海外の自作エアキャノン動画ではこれらの弁を使っている人もいますが、できるだけ早くコックをひねることに執着していて正直見てて残念な気持ちになります…
さて次に開放速度が大きいバルブとしては、市販のエアーガン等があります。
ア理工の登場で一躍有名となったこの形状のエアーガン(ちなみにここで買えます。)
しかしこれらは流量が非常に少ないので、押し込んだ後、メインピストン稼働までにラグが生じてしまいます。
以前紹介したこの動画では、上の写真のエアーガンを利用していますが、押し込んだ後、若干の排気音の後、メインピストンが稼働しているのがわかります。
これでは瞬発力が足りず、要はかっこ悪いので、更に高速大流量なバルブを用意する必要があります。
電磁弁もこの要件を満たしてはいますが、電気の力を使ってしまっては意味がありません。
それだったら初めからキャノンの機構なんて使わずに、電磁弁でタンクのエアーを開放してやればいいのですから…
機械的な動作のみでそれらを実現するのがロマンなのです。
今回採用するバランスバルブについて
前置きが長くなってしまいましたが、今回採用するのはバランスバルブと呼ばれるバルブです。無圧バルブとも呼ばれているようです。また海外ではQDV(quick dump valve)とも呼ばれており、こちらで検索したほうが情報は多く集まります。開放が高速で大流量、かつ開放に抵抗がほぼ無いという素晴らしい利点を備えています。
それゆえエアガン界隈では違法カスタムの手段として有名らしいです( 詳しいことはしらない)
YoutubeでQDVと調べると自作エアガンの動画が大量に出てきます。
さてこの動作原理は以下のようになっています。
まず内部はこのようになっています。
シリンダーの中にOリングを使ったピストンが2つ収められており、そのピストンの間から高圧側へつながるラインが伸びています。
高圧のエアが流入してきた時の様子です。
2つのピストンの直径は同一であるため、圧力が釣り合いピストンは動くこと無くシールします。この辺りがバランスバルブとよばれる所以です。
このピストンを右へ押し込むと上のイラストのように右端が開放され、高圧のエアが一気に大気中へ開放されます。以上が動作原理です。
たとえばエアダスター等の弁だと、高圧にしたり、流路の断面積を大きくすると、弁に掛かる圧力が大きくなってしまい、指の力では押し込めなくなってしまうため、ある一定以上、流量を大きくすることができません。
例としてあのエアダスターの内部構造を示します。
このエアダスターの内部機構を図示したのはこのblogだけなんじゃないかと思います…
このような感じで内部に弁が入ってます。
何処かにスプリングが入っているはずですが、描き忘れました…
イラストから分かる通り、内圧と弁の断面積に応じた圧力が弁にかかっています。
(中学生で習うF=PAですね)
この点でバランスバルブは、どんなに圧力を高く、ピストン直径を大きくしても、弁の動作に必要な力はほぼ皆無で変化しないのが利点なのです。
設計
今回作成するバランスバルブの設計図のようなものです。相変わらずIllustratorで設計しています。
製図法にまったく準拠していないのでご了承ください…個人レベルのDIYなのでわかればいいです。
内部にスプリングを納めてあるので、銃のトリガー部分として作用します。
制作
φ20の真鍮パイプを切断します。パイプといっても厚みが3mmある頑丈なパイプです。
切断したパイプに割り出し機とハイトゲージを用いてケガキをしておきます。
工作室があるとこのへんの高価で高精度な工具が使えるのがありがたいところです。
ボール盤で1/8の管用ネジの下穴を開けます。
スコヤを当てながらタップ立てをします。
管用ネジの場合、タップの直径が大きいため、スコヤを使わないと直角を出すことは非常に難しいというか、そもそも目分量でやること自体が失敗な気がします…
これでシリンダーは完成です。
丸棒からピストンを削り出します。突切りバイトでOリングをはめる溝をつくります。
これを2つと、シリンダーの両端を塞ぐ部品も同時に作っておきます。
センタポンチを打ちます。ばね式のオートポンチを使っているのですが、これは必携です…捗りますよ!
完成
そんなこんなで完成です。
ピストンを押し込むと、このように片方のピストンがシリンダーから飛び出し、エアーが開放されます。手を離すと組み込んだバネにより元の位置に戻ります。
部品構成はこんな感じです。
写真の右は以前作成したバランスバルブに使っていたニップルで未加工のものです。
バルブの流路の中でこの部分が最も断面積が小さいので、ここの拡張は性能向上に効いてきそうです。
さて、これでMk.11における空圧関係の部品はすべて完成したことになります。
後日、これらを組んでみて、最小構成での動作試験を行なってみたいと思います。
それと合わせてMk.11の動作原理も説明するつもりなので乞うご期待です。
その後は一番設計で詰まっているトリガーやグリップ周りですかね…
旋盤や割り出し機等で作れる部品はいいのですが、銃のトリガーやグリップのような、非対称で、人の手の形を考慮したり、そういう部品を考えるのはむずかしいです…
では今日はこのへんで!
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